先日、ピアノや音楽に詳しくない知人と
話していた時のことですが、
私がピアノを教えていると言うと、
「じゃあ、どんな曲でも間違えずに弾けるんだ」
と言われました。
どんな曲でもと言っても、世界に曲は無数にありますし、
世界的に有名なピアニストでも
ミスをすることはありますから、
いつも一つのミスもなく弾ける人は
世界中にいないと思うのですが、
クラシックやピアノに普段関わりがない人からすると、
そんな風に思うのだなぁと思いました。
その話をした人は別に
そんなに深く考えて言ったわけではないと思いますが、
そこから色んなことを思いました。
間違いだらけでは美しさが損なわれたり、
集中して味わいにくくなりますから、
ミスは最小限にしたいですし、
上手なことの条件の一つにテクニックも含まれ、
ミスが少ないのは確かに上手なことの
一つのポイントだと思いますが、
先生イコール間違えない人とは
言えないように思います。
これはどの分野でもよくある誤解だと思いますし、
先生に限らず、親という立場もそうですね。
そうやって自分や人に完璧さを求めると
苦しくなったり、
思っていたのとは違うとなるでしょう。
ピアノに限らずですが、
音楽は何かを伝えるためのもので、
表現することによって何かを感じてもらうものです。
ベートヴェンもショパンも、
たくさんの音の1音1音に意味があり、
想いを込めて創ったと思いますので、
嘘を弾かれると「それは違う!」と
思うのだろうと思いますが、
ただ間違えずに弾いてもらうために曲を作ったわけではなく、
伝えたいことがあったからで、
それを聴いて感じて欲しかったのだろうと思います。
そう考えると、人生も同じだなと思いました。
間違えないで正しく弾くために
ピアノがあるわけではないように、
間違えないで正しく生きるために
人生があるわけではなく、
創造主や神様は私たちに間違えずに生きて欲しくて
人間を作ったわけではないでしょう。
音楽も人生も、その美しさや様々な想いを味わい、
自分なりに表現するためにあるのだろうと思います。
(ネパール サランコットの丘にて。
道に迷って一人半泣きで登った途中で見た景色です。
ヒマラヤ山脈が見えています。)
20世紀を代表するピアニストのホロヴィッツが
弟子を送り出す時に、
「さあ!世の中へ出てミステイクをやってきたまえ!
でもそれでいいんだ。君のミスだからさ。
君自身のミスでなければならない。
君の音楽で何かを言ってきたまえ。
何でもいいのさ、“これが君だ”という何かをね。」
と言ったそうですが、
これはピアノだけではなく人生にも当てはまりますね。
さすがは巨匠の言葉です。
間違えていいのは、
経験の少ない未熟な若者だけに許された特権だ
と思っていると、
いい年をした大人の私たちは、
失敗しないように、間違えないように、
何もしないで生きるしかなくなります。
そんな風に人の目や評価を気にして生きる人生は
息苦しく、楽しくないです。
例えば人生で失敗をしても、
神様はきっと私たちを応援してくれると思いますし、
うっかり間違った道を歩いても、
ダメだと知りながら道を踏み外しても、
そこから学び成長し、より輝くことを
願ってくれていると思います。
間違えるな、正しく歩け、とは言わないと思います。
たいてい旅話でも、失敗談がおもしろいですし、
後でいい思い出になり、学ぶことが多いものです。
ただ、大事なことは、
ホロヴィッツの言葉にもあるように、
自分自身のままで生きることだと思います。
そのために生まれてきたのですから。
神様は、私たち一人一人が宇宙でただ一人の存在として、
自分のままで生きて欲しいと思っていると思います。
宇宙からすれば私たちも幼い子供のようなものです。
間違えずに一生を歩ききるだけの人生より、
このいただいた生きる機会を、
思い切り笑ったり泣いたりしながら味わい、
ミスを恐れずに、自分であることを全うしたいですね。
間違いを恐れず自分のままで歩く人生の物語は、
宇宙でただ一人
あなたにしか創ることができない神様への贈り物ですから。
(神様にもできないことです!すごいですよね!)
これは、いつも無邪気な子供のような心で、
真っ直ぐに新しい今と向き合うということです。
そうして自分にしか描けない物語を作っていきましょう。
ピアノでも、一つのミスもなく弾く機械より、
間違えながら弾く人間の生の音楽に感動します。
これは本当に見事で、
機械が正解を奏でても何も感じないのです。
たどたどしくて、時につっかえたりしても、
人が弾くとそこにその人が存在して、
感じるもの、心に響くものがあります。
いつだって人の心に届くのは、
不器用でもカッコつけずに
素のままでぶつかっていく人の姿です。
そんな人はみんなから愛されますし、
応援したくなります。
間違えることや上手に生きられないことなど
気にしないで、
これが私だと言えるように生きたいですね。
10/18、10/21が満席となりましたので、
11月7日(土)に追加開催させていただきます。
本日9日より受付を開始いたします。
↓下のページで詳細をご確認の上、お申込みください。